Présentation- コンテ30ヶ月熟成について
コンテ30ヶ月熟成(Comté 30 Mois)は、フランス東部ジュラ地方でつくられるAOPチーズの中でも、とりわけ希少な長期熟成タイプです。30ヶ月以上の歳月をかけてゆっくりと旨みが凝縮され、若いコンテにはない圧倒的な深みと複雑さが生まれます。
黄金色の生地にはアミノ酸の結晶がきらりと光り、ひと口かむごとにヘーゼルナッツやカラメル、熟成バターのような芳醇な香りが広がります。生地は引き締まりながらもしっとりと滑らかで、噛むほどに豊かな旨みとほのかな甘みがあふれ、ふくよかな余韻が長く続きます。
長期熟成に耐えうるホイールだけが30ヶ月まで大切に育てられるため、生産量も限られた特別なコンテ。チーズ好きの方にはもちろん、贅沢なギフトや特別な食卓にもふさわしい、まさに“熟成の極み”と呼べる逸品です。
Histoire- コンテ30ヶ月熟成の歴史
コンテの歴史は12世紀、フランス東部ジュラ山脈の麓で暮らす農民たちの知恵から始まりました。厳しい冬を乗り越えるため、日々の搾乳をまとめて大きなホイールに仕上げ、長期間保存できるように工夫されたのがコンテの原型です。大量のミルクを必要とするため、村ごとに「フリュイエール(共同製造所)」が生まれ、人々が力を合わせてチーズづくりを行ってきました。
こうして育まれたコンテは、時代が変わっても地域の誇りであり続け、熟成庫での時間の積み重ねが味わいを深める“時間の芸術品”として発展してきました。
その中でも30ヶ月熟成は、選ばれたホイールだけが到達できる特別な存在。長い歳月を通して生地がゆっくりと変化し、若い熟成では現れない奥深いアロマや旨みが形成されます。熟成士(アフィヌール)の経験と精密な温度管理が欠かせず、まさに地域の伝統と職人技が結実した逸品です。
このようにコンテは、30ヶ月という長い時間を経て、コンテはかつてジュラの人々が冬を越すために生み出した“保存の知恵”から生まれたチーズなのです。
Région-コンテ30ヶ月熟成の生産地域
フランシュ=コンテ地域は、スイス国境に接するフランス東部の山岳地帯。手つかずの自然と牧草地が広がり、澄んだ空気と涼しい気候が、良質なミルクとチーズ文化を育んできました。この土地の食文化の中心にあるのは、季節に寄り添いながらシンプルな素材の味わいを大切にする、素朴で力強い料理です。
冬が長く厳しい地域であるため、保存性の高い食材が発達し、コンテをはじめとする熟成チーズや燻製肉、塩漬けのシャルキュトリーが日常に欠かせません。ジュラの白ワインと一緒に味わうフォンデュや、ジャガイモとベーコンを合わせた温かい家庭料理は、この地域らしい“山の恵み”の象徴です。
また、豊かな森と牧草地が広がるフランシュ=コンテ地域では、四季折々の食材が食卓を彩ります。春には野生のハーブやアスパラ、夏には牧草地で育った牛のミルクを使ったチーズが旬を迎え、秋にはキノコや栗が食卓に並び、冬には力強い煮込み料理が体を温めます。こうした自然のリズムが、土地の料理にもそのまま息づいています。
Accord Vin et Fromage - 合わせるのにオススメなワイン
30ヶ月という長い熟成を経たコンテには、深いコクとナッツのような芳香、ほのかな甘みが幾層にも重なっています。その複雑な味わいを最大限に引き出すためには、ワインにも同じく“時間のニュアンス”をもつ一本を選ぶのが鍵です。
まず試していただきたいのは、コンテの故郷・ジュラ地方の ヴァン・ジョーヌ(Vin Jaune)。酸化熟成によって生まれるクルミやスパイス、カレーリーフのような独特のアロマが、コンテのナッティな香りと見事に響き合います。ひと口合わせるだけで、チーズの甘みがふわりと開き、長い余韻がより一層伸びていくのを感じられるでしょう。
白ワインなら 樽熟成したシャルドネ も相性抜群です。バターやヴァニラ、ローストナッツのニュアンスが、長期熟成コンテの旨みと自然に溶け合い、まろやかで気品あるペアリングが楽しめます。
赤ワインを選ぶなら、力強さよりもエレガンスをもつ ピノ・ノワール を。赤い果実の香りと程よい酸が、コンテの豊かな旨みを軽やかに持ち上げ、熟成による複雑な香りと調和します。特にブルゴーニュのピノ・ノワールは、しなやかさと深みのバランスが絶妙で、コンテの長い余韻と寄り添うように広がります。
