Présentation- ル・フリブールについて

ル・フリブール（Le Fribourg）は、スイス西部・フリブール地方のアルプス山麓でつくられる、伝統製法が息づくハードタイプのチーズです。この土地はグリュイエールやヴァシュラン・フリブールといった名品の故郷としても知られ、豊かな牧草地と澄んだ山の空気が、力強くも繊細な乳の味わいを育みます。

ル・フリブールに使われるのは、特有のサーミゼ処理（thermisé）を施した牛乳。高温殺菌ではなく、より穏やかな温度で加熱することで、ミルク本来の風味を損なわずに衛生面を確保するという、まさに“自然の力と人の知恵”が両立した製法です。そこへ自然酵母と仔牛のレンネットを加え、じっくりと発酵・凝固。時間をかけて丁寧に圧搾され、成形されます。

熟成期間は約 270日（9か月）。この静かな熟成のあいだに、表皮は塩水で何度も磨かれ、ごく薄いウォッシュタイプの外皮が形成されます。外皮は食べることもでき、噛むほどに旨みと香りがじんわり広がるのが特徴です。

切り口はつややかでなめらか。香りはナッツや干し草、バターのような柔らかいトーンが重なり、味わいはコクがありながらもバランスがよく、後味はクリーンで心地よい余韻が続きます。グリュイエールほど重くなく、コンテよりも穏やかで、フリブール地方のチーズらしい「やさしい力強さ」が宿っています。

Histoire- ル・フリブールの歴史

ル・フリブールは、スイス・フリブール地方に根づくアルプスのチーズ文化から生まれた、比較的新しい存在です。創り手は、チーズ職人ジャン＝フランソワ・ビールマン。グリュイエールやヴァシュランといった名だたる名品が受け継いできた伝統を深く理解しながら、そこに現代的な感性と技術を重ねることで、このチーズを生み出しました。

背景にあるのは、「伝統の美点を守りながら、よりピュアでバランスのとれた味わいをつくりたい」 という思い。ビールマンは、フリブール地方の昔ながらの山岳チーズの製法を研究し、ミルクの扱い方や熟成のプロセスに細やかな改良を加えました。その結果、クラシックなアルプスチーズのコクと深みを持ちながら、現代の食卓にも寄り添う、洗練された味わいが実現しました。

Région-ル・フリブールの生産地域

スイス西部に広がるフリブール地方は、湖とアルプスが隣り合う自然豊かな土地で、牧畜と農業の伝統が息づく“食文化の宝庫”として知られています。フランス語圏とドイツ語圏の境界に位置するため、料理にも両方の文化が影響を及ぼし、素朴で力強い山の料理から、クリーミーで洗練されたフレンチスタイルまで、多彩な味わいが共存しています。

中でも中心にあるのは、アルプスの牧草地で育つ牛のミルクを使ったチーズ文化。フリブール地方は、グリュイエールやヴァシュラン・フリブールなど、欧州を代表する名品の産地でもあり、伝統的なフォンデュ文化の本場としても有名です。2つのチーズをブレンドしてつくる「モワティエ・モワティエ（半々）」は、この地域の冬の定番料理。とろりとした質感と豊かなミルクの甘みが、家庭の食卓をあたたかく包み込みます。

また、標高の高いアルプスの山間部では、季節ごとに山小屋へ移動しながら放牧する“アルパージュ”の文化が根づいています。季節ごとに変化する多様なハーブや野草を食べた牛から搾られるミルクは、チーズに複雑で奥深い香りをもたらし、地域の味の個性を育てています。

ミルク以外にも、フリブール地方は肉料理や穀物料理も豊富。燻製肉の「ビュンドナー・フライシュ」や、じゃがいもとチーズを組み合わせた素朴なオーブン料理、湖で獲れる淡水魚の料理など、季節と自然の恵みを大切にした一皿が多く並びます。

Accord Vin et Fromage - 合わせるのにオススメなワイン

ル・フリブールの味わいは、ミルクの甘みとほどよいコク、そして心地よいナッツのような香りが重なった、バランスの良いハードタイプ。その豊かな風味をより引き立ててくれるのは、スイスらしい繊細さのある白ワインと、軽やかでフレッシュな赤ワインです。

まず試していただきたいのが、スイスを代表する白ワイン、シャスラ（Chasselas）。柔らかな酸とミネラル感が、ル・フリブールのクリーミーな口当たりと見事に調和し、後味をすっきりまとめてくれます。チーズのふくよかな旨みを包み込むような優しいペアリングで、まさに現地でもよく楽しまれる組み合わせです。

赤ワインなら、ピノ・ノワール（Pinot Noir） が最適。タンニン控えめで果実味がきれいに広がるタイプを選ぶと、チーズのミルキーな甘みと香ばしさを損なわずに引き立ててくれます。重すぎず軽すぎない絶妙なバランスが、ル・フリブールのしなやかな風味と寄り添います。

より香り豊かなものをお探しなら、

• アロマティックな白（リースリング・シルヴァネール・ピノブランなど）
• 軽いガメイ（Gamay）

といったワインもおすすめ。すっきりとした飲み口の中に果実味があるワインは、ル・フリブールのミルクの甘みを美しく際立たせ、熟成によって生まれる旨みの層をより深く感じさせてくれます。

エルワンおすすめのペアリング

オーギュスト・ピルー / コート・デュ・ジュラ シャルドネ フローラル 2023 ジュラの冷涼な空気を感じる一本。 白い花、ヘーゼルナッツ、リンゴの香りに、ほのかな酸化のニュアンス。 ワインの花の香りと塩味が響き合い、余韻に清らかなミネラルを残します。