Présentation- キステラについて
キステラ(Chistera)は、フランス南西部・オート=ガロンヌ県とピレネー=アトランティック県でつくられる、羊乳のチーズです。ひと塊で約1kgの丸い形に仕上げられ、切り分けた瞬間に、2つのミルクの個性がふわりと立ち上がります。
断面は淡いクリーム色。しっとりとしてなめらかなのに、ほろりと崩れるような繊細な食感が特徴で、羊乳のコク深さが広がります。最初に広がるまろやかさのあと、ほんのりナッツの香りや複雑な甘酸っぱさが続き、口の中で余韻がゆっくりとほどけていきます。
32%の脂肪分がもたらすほどよいコクのおかげで、テーブルチーズとしてそのまま味わっても、サラダや料理に加えても存在感が際立つ万能タイプです。
Histoire- キステラの歴史
キステラが生まれたのは、フランス南西部・オート=ガロンヌ県を中心とした、羊の放牧が盛んな土地。山肌に広がる牧草地では、古くから人と家畜が寄り添うように暮らし、その豊かなミルクを使ったチーズ作りが日常の営みとして根付いてきました。
近代になると、衛生管理や熟成の技がより洗練され、低温処理によってミルクの風味を守りながら仕上げる製法が定着。これにより、かつては地元の家庭で楽しまれていた素朴なチーズが、品質を保ちながら広く流通するようになります。
Région-キステラの生産地域
フランス南西部に位置するオート=ガロンヌ県は、ピレネー山脈から吹きおろす風とガロンヌ川流域の豊かな大地に恵まれ、素朴で力強い“南西フランスの食文化”が色濃く息づく地域です。トゥールーズを中心としたこの県の食の魅力は、土地の恵みを生かした料理と、家庭で受け継がれてきた伝統のぬくもりにあります。
まず象徴的なのは、鴨料理の文化。南西フランス全体に共通する特徴でもありますが、オート=ガロンヌ県では特にカスレ(Cassoulet)が郷土料理として有名で、白インゲン豆をベースに鴨のコンフィやソーセージを合わせ、何時間もかけて煮込む豪快で温かい一皿が日常の食卓を支えています。トゥールーズ名物のトゥールーズ・ソーセージもまた、この地域を語る上で欠かせない存在で、シンプルながら奥深い味わいで人々に親しまれてきました。
また、山あいと平野部が共存する地形は、多様な畜産と農業を育んできました。羊と山羊が放牧される高地では、キステラをはじめとするさまざまなチーズが生まれ、伝統的な農家製チーズ(fermier)は今もなお地域の誇りです。平野部ではトウモロコシ、小麦、野菜、果物が育ち、地元の農産物を中心とした素朴な料理が愛されています。
ワイン文化も深く根を張っており、ガロンヌ川沿いには古くから小さな生産者が点在し、日常的に地元のヴァン・ド・ペイを楽しむ習慣が残っています。しっかりとした味の肉料理やチーズに合わせるため、南西らしい果実味と力強さを備えた赤ワインがよく飲まれています。
Accord Vin et Fromage - 合わせるのにオススメなワイン
羊乳のコクが広がるこのチーズには、透明感のある果実味や、控えめな樽香、穏やかな酸をもつワインがよく寄り添います。
まず試したいのは、南西フランスで親しまれるフルーティーな白ワイン。ソーヴィニヨン・ブランのハーブのニュアンスや、コロンバールの軽やかな酸は、キステラのミルキーさをすっきりと引き立て、後味に清々しさを添えてくれます。樽の効きすぎないシャルドネも相性がよく、チーズの風味を包み込むような丸みのある味わいを楽しめます。
赤ワインを合わせたいときは、タンニンが控えめで果実味の優しいものが理想的です。ピノ・ノワールの軽やかな赤果実の香りは、チーズの繊細な甘みと自然に溶け合い、羊乳ならではの余韻をふくらませてくれます。同じく南西地方の軽めのガメイや若いメルローも、まろやかな口当たりで食卓に心地よい調和をもたらします。
